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サイレント映画の大スター、ハロルド・ロイドに“音”が吹き込む新たな命!映画『猛進ロイド』ピアノ伴奏上映

2019年10月20日(日) レポート

「京都国際映画祭2019」の最終日となった10月20日(日)、大江能楽堂で行われる上映プログラムのラストを飾るのは、喜劇王ハロルド・ロイドの1926年の主演作『猛進ロイド』。ピアニストの柳下美恵さんによるイマジネーション豊かな伴奏で、93年前に生まれたサイレント作品に新たな命を吹き込みました。

『猛進ロイド』は、ロイドが自ら興したプロダクションの第1回作品。フレッド・ニューメイヤーがメガホンをとり、本格的な純愛ドラマと爆笑コメディの融合に挑んだ野心作です。

上映会のゲスト・喜劇映画研究会代表の新野敏也さんによれば、その大きな魅力は俳優陣の「細かい表情」。サイレント時代のコメディは、喜怒哀楽を表情ではなく大きなジェスチャーなどでわかりやすく表現したドタバタ喜劇が多いのですが、この作品は「ドタバタ色が少なくてストーリーが細やかな、キレイな映画」と新野さん。タイトルの“猛進”から勇ましい映画かと思いきや、これは大正時代に日本で公開された際に独自につけられた邦題で、もともとの原題は“女性が苦手なはにかみ屋の男性”を表す『GIRL SHY』です。このギャップにはMCの清水圭もビックリ。柳下さんは「せっかくかわいいタイトルがついてるのに」と、原題の方がお気に入りのようです。

さて、そんな本作でロイドが演じる主人公は、仕立屋に勤める青年・ハロルド。女性を前にするとまともにしゃべれなくなる、まさに“GIRL SHY”ですが、独自の研究で“恋愛の秘訣”なる恋のハウツー本を書き上げ、出版社に売り込もうと張り切っています。そんななか、偶然出会った令嬢に恋をしてしまうのですが…。ダンスに興じる男女をうらやましげに眺めながら、思わずステップを踏んでしまうハロルドを、ピアノの軽やかなタッチで表現するなど、主人公の心情をよりクッキリと、繊細に浮かび上がらせる柳下さんの伴奏は見事のひと言!さらに今回は新野さんも“効果音担当”で参加。ホイッスルやベルなどを駆使しながら、作品に彩りを添えました。

そして、なんといっても最大の見どころは終盤のクライマックス!愛する女性の危機を救うため、ハロルドが自動車で、馬車で街を猛然と駆け抜けるシーンのドキドキハラハラ感を、柳下さんの緩急自在の演奏が煽ります。上映時間は65分。その間、映像にピッタリと寄り添った音楽を奏で続けた柳下さんに、新野さんは「いいタイミングで間を作ったりとか、ストーリーに沿ったすばらしい演奏です!」と賛辞を。客席からも大きな拍手が起こりました。

さらに上映後は、新野さんによる映画トリビアのコーナーも。「最後の馬車のシーンがすごかった!」と興奮冷めやらぬ圭ですが、このシーンには同時代に作られたあるスペクタクル映画の名作の影響が色濃いことや、記録には残っていないロイドのスタントマンの正体、ロイドの独立のきっかけとも言われているプロデューサーとの“不仲説”を否定するようなシーンが本作のあちこちに見られることなど、ファンにはたまらないディープなトリビアが続々!映画愛にあふれたトークで、上映会を締めくくりました。

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