来春に全国で順次公開も決定! 茨城県中から探したエキストラ、萩野谷幸三さんが映画初出演にして初主演を果たしたモキュメンタリータッチの『エキストロ』を上演!
2019年10月19日(土) レポート
10月19日(土)、T・ジョイ京都にて『エキストロ』(NHKエンタープライズ)が上映されました。こちらは「TV DIRECTOR‘S MOVIE」出品作品で、主人公は63歳のエキストラ。テレビや映画の時代劇撮影が数多く行われているワープステーション江戸を舞台に、市民エキストラたちの悲喜こもごもの営みを描く骨太なドキュメンタリー……と見せつつ、奇妙な事件や人物の登場でストーリーはあらぬ方向に流れていくという多重構造になった作品です。
フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリ―)のスタイルで、映画製作の夢と名もなき人生の愛おしさを謳い上げる意欲作。山本耕史、斉藤由貴、寺脇康文、大林宜彦らが次々と実名で登場する場面も見どころです。監督は村瀬直樹、脚本は後藤ひろひとが務めました。
上映後におこなわれた舞台挨拶では、主演の萩野谷幸三さん、後藤ひろひと、村橋直樹監督が登壇しました。
「主演をさせていただいた萩野谷幸三と申します。『京都国際映画祭』に来ることができて非常にありがたいと思っています。村橋監督、後藤さん、NHKの皆さんのおかげで、こんなじじいが主役をさせてもらえました」とご挨拶。脚本を担当した後藤は「物語は全部嘘です! ただ、萩野谷幸三さんという方は実在の人物です。ものすごく楽しく撮らせていただきました」と満足気な表情を浮かべました。普段はNHKでドラマを作っている村瀬監督。「野郎3人の舞台挨拶はなかなかありませんが、雨の中、来てくださって本当にありがとうございます」と感謝の言葉を述べました。
映画初出演で初主演を果たした萩野谷さん。起用された時の気持ちをMCのアッパレード木尾が尋ねると「本当に驚きました。私みたいな者が主演で映画に出ていいのかと自問自答しながら、出させていただくならやれる限り頑張ろうと」と、逡巡の末に意を決したことを明かされました。後藤によれば、萩野谷さんは茨城県中から探し出した俳優さんで、普段は茨城県土浦市が拠点の劇団創造市場に所属されています。オファー直前には後藤脚本の作品を上演しており、「まさに映画『ロッキー』みたいな話ですよね。突然タイトルマッチにオファーされるという…」と後藤、いかに大抜擢だったか映画に例えて解説しました。
フェイクドキュメンタリー、またはモキュメンタリーと呼ばれる手法で撮影した本作。「日本ではモキュメンタリーは私が第一人者と言われていますが、『川口浩探検隊』とか矢追純一さんなど昔から放送しているんです。日本はモキュメンタリー大国。テレビでモキュメンタリーを観て多くの人が育っています。あれは嘘かどうか翌日の学校や会社で語り合う。そういう楽しみ方を取り戻したいと思って作りました」と製作意図も語りました。
村橋監督は普段、NHKでドラマを撮影しているスタッフを起用。本作はスタッフの撮影現場を盗み撮りする感覚で撮ったとか。それだけに「カット!」の声がかかると、本当に撮影が終わったかと思うスタッフが続出、まだカメラが回っているにもかかわらず脱力感でいっぱいになったと後藤が振り返りました。また、エキストラの方もたくさん起用していることから「エキストラあるある」でも盛り上がりました。
どこまでが素で、どこまで演技なのか境界線も曖昧。「観ていると何が何だか分からなくなりますね」と戸惑いを隠せない木尾は、「もう1回、“これは本当”とか“これは嘘”とか解説付きでみんなで観たいです」と希望。すると「ほんと! それやりたいね!」と後藤も声を弾ませます。
『エキストロ』は2020年3月13日(金)に新宿シネマでの上演も決定、全国順次ロードショーされます。作者の後藤が「お蔵入りになると思っていた」作品がついに、日の目を浴びます。「最低でも2回は観てもらわないといけない。荒俣宏さんが何匹、怪獣を作り上げた人なのか分かったうえで観ていただきたいですし、斉藤由貴さんはあんなに運動神経がいいのかとか、検証してください」と観る楽しみも伝授。村橋監督も「一緒に映画体験をしていただけるような作品になったと思います。ぜひ、たくさんの方に観ていただけるとうれしいです」とアピールしました。
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