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東京都のバンクシー騒動にも言及!どこまでが落書きでどこまでがアートか『グラフィティアートは現代美術なのか?』

2019年10月19日(土) レポート

10月19日(土)、元淳風小学校のふれあいサロンでトークイベント『グラフィティアートは現代美術なのか?』が開催されました。

出演者は、日本の美術館で初のグラフィティ展を企画した能勢伊勢雄さん、世界的に有名なストリート・アートのバンクシーにインタビュー取材した経験があるライター・翻訳家の鈴木沓子さん、そして現在のグラフィティアートのマーケットに詳しいロックライターの保科好宏さんです。この3人にMCとしてガッチリと向き合うのは、アート通としても知られるおかけんた。ふれあいサロンにエエ声が響き渡り、濃厚なトークイベントとなりました。

今やアートとしてオークションでも高値がつけられるようになっているグラフィティアートですが、1970年代、ニューヨークの地下鉄や路上の落書きから始まったもの。この現象の先がけとなったBanksy(バンクシー)を中心に、スライドショーとともにグラフィティの過去・現在・そして未来を追っていくことに。

まずは、京都国際映画祭のアートイベントの常連でもある能勢さんが「時間も足りないし、バンクシーはお二人に任せるプログラムになっておりますから……」と笑いを誘いつつ、自身が企画した「X-COLOR/グラフィティ in Japan展」(2005年/水戸芸術館)のエピソードを軸に、グラフィティアートの歴史を紐解いていきます。
「文字の骨格は国家が所有しているが、文字の輪郭は誰も所有していない」ことを発見したラメルジーが”文字の武装化”を生み出し、グラフィティ固有の"ワイルドスタイル"が誕生し、”スタイルウオーズ"が始まりました。そして、”文字の武装化”を進化させた”スタイルウオーズ”を経て今日のグラフィティへと発展しています。公共の領域に向けて表現を発するものがグラフィティです。「制度的」な空間と「私的」な空間の間に介在する公共圏、路上の壁面に晒し、「通行人に見られるという”裁き”を通じて、やっと本来の自己と出会うわけです。これはグラフィティを考えるうえでは絶対外せない。そういう思いで、X-COLOR/グラフィティ in Japan展を開きました」。
さらに能勢さんは続けます。
「グラフィティは社会への警告。それは社会において、辛辣なメッセージを展開するので行政担当者はすぐ消すわけですよね。でも続々と出現し続ける。これがグラフィティの命なんです。消されることが前提なので、東京都庁がバンクシーにアクリル板をかけて飾るのはおかしい」と、先日話題になった東京都庁のバンクシー騒動にチクリ。

バンクシーに取材をした経験がある鈴木沓子さんは、昨年サザビーオークションで起きた「バンクシーシュレッター事件」(落札された瞬間、バンクシーが仕込んでおいたシュレッダーが作動して、絵が断裁されるというもの)の映像などを挟みつつ、バンクシーの作品を紹介。バンクシーは〝現代美術〟なのか〝グラフィティライター〟なのか、というテーマについても鈴木さんがインタビューを敢行したとき、バンクシー本人から「とても真面目に『世界平和を目指している』と言われました」というエピソードにも触れ、「バンクシーはグラフィティからも現代美術からも距離を置き、その中間に立って、戦略的に活動している作家なのかなと。自分の作品を後世に残すというより、自分の作品を使って、いかに社会を変えていけるかということに力を注いでいるので人気が高いのだと思います」。
さらに、東京都のバンクシー騒動についても「無名の落書きは消されるのに、バンクシーの落書きだけ保護されて。落書きとアートの違いはなに? ということだったと思います」と、バンクシー作品のダブルスタンダード化について語りました。

そして、最後にバトンを受けた保科さんは、バンクシーに影響を与えたアーティストの紹介や、バンクシーが与えた影響や功績を紹介しました。
「バンクシーが2003年に仲間たちとPOW(Pictures on Walls)を設立したのは大きな功績ですね。ギャラリーを通さず、インターネットで売り出し、アーティストの生活の糧になるようなベース作りをしようとしたのだと思います。POWは、グラフィティライターだけでなく、デザイナーから人材を引っ張り出し、オークションの常連になるような才能を輩出しています」。
さらに、バンクシーがマーケットに出た影響を語るうえで欠かせない、アートオークションの話題も広がりました。

そして最後には、おかけんたが3人にグラフィティアートの現状に対する問いかけを行い、アパレルやフィギュアなどデザイン的なグラフィティが商業主義に乗ってしまっているのでは、と指摘。
能勢さんは「壁があってこそのグラフィティ。そこから動くと意味がない。切り取って、解説文を付けたって意味がない。場所とともにあってこそ意味がある」と強く答えます。
「ネットの罪もあるかもしれないですね。多方面に広がっていて、本来のものが薄れちぐはぐになっている。グラフィティは理解されていない部分があり、そういう意味では現代美術に近いんじゃないかと思います。芸術にしてもお笑いにしてもそうなんですけど、再評価が大切。繰り返しながら新しいものを生み、広がる気がします。グラフィティアートもそれを期待したいですね」
おかけんたも興奮し、超早口でアート愛を披露。そのままトークセッションは盛り上がりを見せ、予定の時間を延長! 熱い余韻を残しつつ終了しました。

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