日本を代表する道化師コンビ・ロネ&ジージが解説!ローレル&ハーディの「リバティ」「ミュージック・ボックス」を上映
2019年10月19日(土) レポート
10月19日(土)、大江能楽堂の2番目のプログラムは、「ローレル&ハーディ特集/コンビ芸の美学」です。上映前に、清水圭の司会で、喜劇映画研究会の新野敏也さん、なべおさみ、道化師コンビ・ロネ&ジージさんによるトークショーが行われました。まずは、清水圭が「映画をこよなく愛すこのお方!」と紹介したのは、なべおさみ。「なべさんは今年の5月から吉本興業に入られたんですよね」と清水。「80歳にして新入生として吉本興業にはいりました!」となべから若さの秘訣が語られたあと、「映画は1950年、小学校5年生の頃から見ていて、年間250本は見ていました」と映画好きをアピール。
続いて、喜劇映画研究会の新野敏也さんから、「“ローレル&ハーディ”をばっちり語れるのはこの二人しかいないと思いお呼びしました。今日は素顔で来ていただいています」とゲストのロネ&ジージさんを紹介。モスクワをはじめ、世界各地で修業を積んだ二人は、日本の現役最高峰の道化師コンビで、海外では「クラウン文化のない国の凄いコンビ」と絶賛されています。「まずは、どういう方かを知っていただくために、日本のローレル&ハーディといっても過言ではない二人の実際の公演の様子を記録した映像を見ていただきます」と新野さん。「ロネ&ジージの公演記録より」という約10分間の映像が上映されました。
バカバカしくも繊細な笑いがちりばめられた、言葉で言い表せない感動を呼ぶ芸に目が釘付けに。上映終わりにロネ&ジージさんによる作品解説が。「まずスキルと話のラインを決めて段取りや型を入れていきます」とロネさん。「笑いが土台ですが、喧嘩をしながら、それぞれのキャラが最終的に目的を達成して仲良くなっていくという教育的な側面も。小さな子どもにもわかりやすくしています」とジージさん。クラウン(道化師)の作品の奥深さに触れ、「型の技量は相当な下積みを経てのものですね」と新野さんも驚きの表情。ロネ&ジージさんは、子供向けから大人っぽいものまで幅広く演じているということで、11/4(月)に祇園・シルバーウイングスで開催されるライブ「祇園deコメディMusic」の告知もありました。歌や踊りもあり、お酒をのみながら大人も楽しめる内容とのことです。
そして、いよいよローレル&ハーディ作品の上映に。まずは1929 年のレオ・マッケリー監督の「リバティ」。これは、スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ出演による無声映画期の傑作短編です。今回の上映は製作当時の貴重な音楽伴奏版フィルムを使用しています。「主演のスタン・ローレルはチャップリンと同門で、とにかくパントマイムがすごい人なのですが、映画のために相方と組んだといいます。世界発のボケとツッコミ。この作品では格式高いパントマイムと映画用に練ったさまざまなギャグを見ていただきます。危険でアダルトなギャグもあるんですよ」と新野さんから解説が。「1941年頃から日本でアメリカ映画が上映されましたが、私もたくさん観てきました。下町では古い映画をいっぱいやってくれたんです。当時喜劇は手っ取り早い一服の清涼剤でした」となべからも想い入れが語られました。
出演者も一緒に19分の作品鑑賞後は、「我を忘れて楽しんで観てしまいました」とロネさん。「サーカスのクラウンのスキルが随所で使われていて、オチへ持っていくギャグの構成もすごいです」とジージさん。「ふたりのギャグが優しいところが好きです。ハーディがローレルのことを見放さないところ(笑)。根底にある愛情を感じられるところはお手本にしています」とリスペクトを語ってくれました。映画の中には、ビルの屋上という高所でのパントマイムシーンが出てくるのですが、CGがない時代なので、実際にビルの屋上に鉄骨のセット組んで撮影が行われていたそう。「カメラのアングルとフレーミングでセットが映らないように撮影されているんです。吹いてくる風や景色は本物なので、リアルで迫真の演技になっているんですよ」と現代では考えられない話も飛び出しました。
続いて2作品目は、1932年のジェイムズ・パロット監督の「ミュージック・ボックス」。不条理でヒステリックでシニカル、かつ暴力的ながらも、笑わずにはいられない凶悪な展開が特徴の名作で、1932年のアカデミー賞最優秀短編映画賞を獲得した作品でもあります。「反復が基本のギャグで、フラストレーションをためたあとに爆発的な展開になります」と上映前に、新野さんから見どころが語られました。
28分の「ミュージック・ボックス」上映後のトークでは、「壊す、当たるなど随所にクラウンの型がある。本人たちが普段のままのように、演じていることを感じさせずに展開していくのがすごい」とロネさん。「ハーディがこちら(スクリーンを見ている観客)をみるアイコンタクトは、私たちも仲間にいれてくれているという感覚になります」とジージさんも感想を述べます。「5分くらいでおわりそうな内容だが、面白さを随所に見つけ出して、楽しみながらつくれる時代だった。しつこく見えるシーンものんびり笑えるのが楽しいですよね」と新野さんからも魅力がたっぷりと語られました。今に通じる笑いの原点を垣間見たような、興味深い喜劇の魅力に、どっぷりとハマる時間となりました。
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