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父と娘、そして家族のあり方が心に刺さる『酔うと化け物になる父がつらい』舞台挨拶

2019年10月18日(金) レポート

10月18日(金)、T・ジョイ京都にて、TV DIRECTOR’S MOVIE『酔うと化け物になる父がつらい』が上映されました。

この作品は、アルコール依存症の父親を持つ菊池真理子さんの実体験を元にして描かれたマンガを原作にした作品。父はアルコール依存症、母は新興宗教の信者という、少し変わった両親の元に生まれた主人公の、崩壊していく家族の中でがむしゃらに未来を見つけようとする葛藤を描いた物語です。

上映後の舞台挨拶には、主人公の田所サキを演じた松本穂香さん、脚本の久馬歩(ザ・プラン9)、そして片桐健滋監督が登壇。作品への想いや、主演の松本穂香さんの魅力について大いに語り合いました。

今回、少し変わった両親を持つ主人公を演じた松本さんは、「私には経験のないことだったので、想像しながら、というのは難しかったです。でも私の回りに家庭問題に悩んでいる友だちがいたので、『その子はこんな気持ちだったのかな』といろいろ考えながら演じられ、いい経験をさせていただきました」と感想を。司会を務めるアッパレード・木尾が「もし、自分のお父さんがアルコール依存症だったら?」との質問には、「それが何年も続くっていうのは、やっぱり相当つらい。そんな言葉すら簡単にいえないくらいのことなんじゃないかなと思います」と神妙な表情で答えていました。

今回、松本さんを主演に抜擢した片桐監督は、「以前、オーディションでお会いしたことがあって、キャスティングの時に『これは松本さんにやってもらいたい』と思ったので、今回ご一緒できてよかったです」とし、今年2月に行われた撮影をふり返りつつ「あれから時間が経ちましたが、今日観て改めて、やはり松本さんに主役を演じてもらったのは間違いではなかったと確信しました」と充実した表情を見せていました。
そんな松本さんの魅力を訪ねられた片桐監督は「言い方は悪いかも知れないけれど、ちょっとポサッとしてるんです」とのこと。その理由を「印象的だったのは、寒い時期の撮影だったのでホッカイロをずっとお持ちになっていたんですが、本番までケバケバをむしっていたんです」と裏話を。「でも、芝居が始まると、ポンとスイッチが入り、集中力も高くて。本番にギアを上げてくる瞬発力が魅力でした」とメリハリのある松本さんの魅力を語りました。

また今回、原作のある脚本を初めて手掛けた久馬は、「実話なので、どれだけ色をつけるか。勝手なことはできないし、遊べるのはおっさん3人衆とか、お父さんの酔っぱらい具合で。酔っ払ってベンチで両足を上げているところは片桐監督の実話です(笑)」と、片桐監督のまさかの実話を暴露。これを受けて片桐監督も「そうですね(笑)。だいたいああやって公園で寝てます」と明かし、会場を沸かせます。

片桐監督もまた、菊池真理子さんの原作を大切にしたかったと明かし、「菊池先生が体験されたことを預かって映画にする時に、菊池先生に最初に観ていただいた時に満足していただけるものにしたいというのはありました」と神妙な表情で語りました。

すると久馬が「片桐監督はシャイなんですが、試写会の時に菊池さんが泣いて『ありがとうございます』と言ってくださったのに『はいはいはい…』みたいな感じで、なんか冷たかった」と暴露。これを受けて片桐監督は「そういうの、本当に苦手で…」と苦笑い。「今日も松本さんと久しぶりにあったので緊張しています」と、冷たいわけではなく緊張からくる反応だったと弁解し、それを聞いた松本さんも、「私も人見知りなのでわかります!」と共感。人見知りのふたりのこのやり取りを聞いていた久馬は「『人見知りすぎてスタッフが辛い』というタイトルでもよかったかな?」と言い出し、会場を笑いに包んでいました。

さらに3人のトークは「家族のあり方」という話題に。「家族とは?」という問いに、松本さんは「難しいですね。大事だし、大切にしなきゃいけない存在だけど、いい意味でも悪い意味でも自分の軸になる存在だし、いてもいなくなっても自分の人生に影響を与え続ける存在だと思うんです。家族のあり方はたくさんあるから、答えは出ないと思います」。これを受けて久馬も「家族は、答えはないですよね」と頷きます。

片桐監督は「この映画は、アルコール依存というのがテーマにあるんですが、それより父と娘のディスコミュニケーションの話として観てもらえたらいいなと思っていて」と明かし、「時間がゆっくり流れる中で、本当は大事にしないといけない人間関係に無関心になっていくと、取り返しのつかないことになってしまう。互いに興味を持つとか、この映画を観た後に父親に連絡してみようかな、という気分になってもらえたら。そんな、ひとつの種になればいいなと思います」と観客に語りかけました。
松本さんも、「人によっていろんな感想も、いろんな解釈もあると思うんですが、監督がおっしゃったように、自分の家族のことを考えるきっかけになればいいなと思います。家族のことで悩んでいたり、辛い思いをしている人に、この映画を届けられたらいいなと思います」と語りました。

最後に片桐監督から、この会場で映画を観ていた原作の菊池真理子さんが紹介されました。菊池さんは「私はマンガを書きましたが、映画は片桐監督や、この映画をつくったスタッフの皆さんのものなので、いち観客として楽しく泣かせていただきました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を。

『酔うと化け物になる父がつらい』は、2020年3月6日から新宿武蔵野館ほかで公開。関西でも上映する予定なので、最新情報は公式HP等でぜひチェックしてくださいね!

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