特別招待作品『解放区』(R18+)の舞台挨拶が行われました
2019年10月17日(木) レポート
物語は大阪、西成が舞台。ドキュメンタリー作家になることを夢見る“未満”の青年は、先輩ディレクターとの理不尽な上下関係や被写体との接し方に悩みながらも、小さな映画製作会社で働いています。夢を語り理解してくれる恋人もいますが、ある現場で先輩の取材姿勢に憤りを爆発。職場での居場所を失った彼は、新たな居場所を探すかのように、かつて出会った希望を見失った少年を取材するために大阪、西成へと向かいます……。
さて、舞台挨拶のMCをつとめるのはアッパレード木尾。注意事項と舞台挨拶の流れを伝えます。そして今回のゲストを呼び込みます。
太田信吾監督と、大阪府立大学教授で都市研究学者の酒井隆史さんが登壇し、「よろしくお願いします」と挨拶。
まず太田監督が大阪アジアン映画祭のために助成金で制作していたが、大阪市から、西成の描写やドラックの描写、統合失調症や「どん底」という言葉などの内容に修正が来たことは話します。
そして大阪アジアン映画祭を辞退。「修正したくなかったし、西成をリアルに描きたい。再編集をしてもダメだった」と述べます。
酒井教授は「芸術と助成金の関係は最近も取りざたされているが、よく脚本が大阪市に通ったなと思った」と感心。それに対し太田監督は「西成を特定されるところを修正が来ましたが、大阪市に脚本が通ったのは驚きました」と語りました。
そして助成金も返納し、公開までに5年の時間をが。その心境を問われた太田監督は、「5年経ったことで熟成されてきました。今はない景色があり、あいだができたことで時代劇のようになりました」と話します。
酒井教授は「見てぶっ飛んだ。映画として見たらとんでもない。こんな映画を見たのは初めてだった。一言ではなかなか言えない衝撃的な映画ですね」と感想を述べます。
西成でカメラを回すのは大丈夫だったのかを聞かれると、太田監督は「公園では拡声器で声をかけてダメな人が外れてもらった」。そして西成で映画を撮るきっかけを話します。「2010年に『卒業』という作品を西成で上映しました。その時初めて西成に足を踏み入れ、歴史を聞き、この町の現実を映したいと思い、2013年に大阪市の助成金があると聞きトライしました」。
今の西成をどう思いますか?との問いに、太田監督は、「撮影から6年経ち、労働者の方がだいぶん高齢化して、外国人も増えています。中国人のスナックも増え、中国人が多い。表向きは旅行者やフランス人などのバックパッカーも増えていていますが、路上の市や喧嘩は相変わらず溢れている」と述べます。そして酒井教授は「2001年に大阪に来ましたが、釜ヶ崎や天王寺あたり一帯に驚くことが多くて、『解放区』だと思いましたが、変わってきて危惧している」と語りました。
さらに酒井教授は「釜ヶ崎や飛田を撮れているのがすごい。後世には良い資料になっている」と褒め、太田監督は「飛田新地は何回も通って撮影許可をもらった」と話しました。
今後どんな作品を撮りたいですか?という質問に、太田監督は、「大学で哲学を専攻していたので、王道とは違った側面からものを撮りたい。福島の原発や、日本人として原発や原爆にどう落とし前をつけるかなど。またコメディー映画も撮ってみたいです。笑いやお芝居の力を表現したい」と述べました。
興味の尽きない話はまだまだ聞きたいですが、フォトセッションの時間となりました。
酒井教授は「今日作品を見た皆さんもショックを受けたと思いますが、太田さんには期待をしています」。太田監督は「明日から東京で公開です。大阪、西成の現実を伝えていきたい。感じるものがあれば伝えていただけるたらと思います」と一言ずつ締めの挨拶をし、舞台挨拶が終了。出入り口まで太田監督が観客を見送りました。
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