小学生監督から日本アニメ界のレジェンドまで、クリエイターが世代を超えて競演!「京都国際子ども映画祭連携企画」&「アニメーション*ジェネレーションズ」
2019年10月20日(日) レポート
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10月20日(日)、大江能楽堂で開催されたのは、映像を愛する幅広い世代が結集した2部構成のプログラム。子どもによる子どものための映画祭「京都国際子ども映画祭」連携企画と、20代から80代まで3世代のクリエイターが制作した短編アニメーションのコラボ上映「アニメーション*ジェネレーションズ」が行われました。
MCを務めるのは清水圭。第1部は「京都国際子ども映画祭」連携企画です。今年で25回目を迎える同映画祭は、公募で集まった子どもスタッフが企画から運営、作品の審査や上映会の進行などあらゆることをこなすユニークなイベント。京都国際映画祭では、子どもたちが制作した短編映画『ぼくらのミライ映画館』と、今年の短編アニメーショングランプリを受賞した『ゼブラ』が上映されました。
『ぼくらのミライ映画館』は、京都の街を舞台に、2019年の現在に生きる少年と、20年後の未来から現れた少女がひょんなことから入れ替わるというお話。20年後の京都にやってきた少年は、大好きな映画館が街から消えていることを知って驚きますが、清水圭も「本当にこんな未来が来てしまいそうで心配」と思わず漏らしたその理由とは?さて、キャストはもちろん撮影スタッフ、脚本作りもすべて子どもたちが担当した本作。メガホンを取った吉永眞之介監督はなんと小学4年生です!
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上演前後のトークには8名の子どもスタッフが登場し、吉永監督をはじめ、キャストの山崎彰太郎くん、井川真唯子さんの顔も。吉永監督は緊張しているのか、恥ずかしそうにモジモジしながらも「監督は結構難しかった。みんなもがんばったし、僕もがんばったので、みなさんで作品を楽しんでくれたらいいなと思います。」と作品をPR。山崎くんは「役者殺しの長いセリフがあって。カンペを見ている様子が映っているかと思いますが、許してください(笑)」とユーモラスなコメントで笑いを誘いました。
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そして、小さなシマウマの女の子の冒険を描く『ゼブラ』は、「京都国際子ども映画祭」でも大好評の“生吹き替え”で上映。客席の後方には、その半数が小・中学生という8名の吹き替えスタッフがズラリ。もとのフランス語のセリフに、その場で日本語のセリフを被せていきます。登場人物が多いため、ひとりが複数のキャラクターを演じ分ける大変な作業ですが、映像にもピタリと合った生吹き替えはパーフェクト!これには観客も大喝采です。主人公を演じた女の子は「滑舌よくしゃべるのが難しかったけど、練習したらできるようになってうれしいです」と手応えを語り、清水圭を「偉いなぁ。オッチャンなんか30年以上やってるけど、まだ滑舌悪いで?」と感心させていました。
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第2部は、「アニメーション*ジェネレーションズ」。東京藝術大学大学院映像研究学科アニメーション専攻の修了生を中心とする20〜30代のプロジェクト「アニメーション・パレット」と、クリエイターの池田爆発郎さんが主催する40〜50代の短編アニメーション制作ユニット「ボムフォー64」、50年以上のキャリアを持つベテランアニメーション作家たちが結集し、最年長は80代という“世界最高齢”のアニメーション制作集団「G9+1」の、3世代による短編アートアニメの競演です。
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「アニメーション・パレット」は、今回のイベントにも参加してくれた山北真由子さんが手がけた『花雪』をはじめ6作品を上映しました。『花雪』は、京都で受け継がれる着物の染色に高校生の女の子が魅せられていく姿を描き、美しい色彩表現が見事!ほか、子どもの遊び“だるまさんがころんだ”から悪夢のような恐ろしい世界が展開する野中晶史監督の『めかくし』、ポップなカエルのモチーフが自在に姿を変える永迫志乃監督の『Body Obsession』など個性豊か。山北さんは「作り方はそれぞれで素材も絵の具、墨絵、CGを使ったりといろいろ。影響を受けたものも過去の芸術作品や、自分の地元のことなどさまざまなので、いろんな個性を楽しんでいただければ」と作品の魅力を語りました。
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今年で10周年を迎える「ボムフォー64」からは、主催の池田さん、森田宏幸さん、間山マミーさんと3名のユニットメンバーがイベントに参加。過去作を一挙にまとめた『みんな知りたがっているくせに知ろうともしない、でもそうでもないボムフォー64のここまでのすべて』と、新作の『ボーハム/スパイラルマン』を上映しました。『ここまでのすべて』のトップを飾った記念すべき第一作目『横浜お知らせ2009』は、五木ひろしさんの大ヒット曲『よこはま・たそがれ』の歌詞にインスパイアされた作品。同曲の歌詞のごとく、横浜で目に入った看板などのシンプルなワードを演歌調の歌にのせて繋げていく作品です。そのシュールかつ独特な世界観に観客は大ウケ。自由すぎるアイデアに圧倒された清水圭が「頭ん中、どうなってんすか?」とたずねると、池田さんは「最高の褒め言葉です(笑)」としてやったりの笑顔を浮かべていました。
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日本のアニメーションの黎明期を支えたレジェンド級のクリエイターがそろう「G9+1」からは、古川タクさん、和田敏克さんら8名のメンバーが参加。上映は、最新作の『…を待ちながら』です。“木の下で男がひとり何かを待っている”という共通の設定で、9名のメンバーがそれぞれに発想を膨らませた9本のオムニバスアニメーション。今回はピアニストの柳下美恵さんによる生伴奏とのコラボで見せる、京都国際映画祭だけの特別バージョンで披露されました。ほのぼのと心温まる愛の物語から、壮大な宇宙の広がりに思いを馳せた幻想的な映像までバラエティーに富んだ9つの作品が、柳下さんが重ねる音でさらに表情豊かに。和田さんも「音楽がすばらしい!」と感激していました。
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未来を担う子どもたちからキャリアを積んだ大ベテランまで、自由な発想力に年齢など関係ない!と実感できた充実のプログラムでした。
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